本業の傍らで始めた副業が軌道に乗り収益額が大きくなってくると、個人事業ではなく法人にすべきかどうか迷う状況が出てくることがあると思います。
法人化には節税効果などのメリットがある反面、会社を設立するには少からず手間や費用が必要となるため総合的に検討する必要があります。
そこで今回は副業から法人化することによるメリット・デメリットと、法人化するのであればどのタイミングがよいかについて解説します。
副業を法人化するメリット
副業で行っている事業を法人化するメリットについて順に説明します。
1.節税効果を得られる
法人化する最も大きなメリットは節税効果です!
主な内容としては以下の4つがあります。
節税効果1:法人税率が適用される
副業で個人事業主として事業を行う場合、副業での収益を得ると所得税を納める必要があります。
所得税は累進課税のため、所得が増えるにつれて税率は最大45%まであがるとともに、住民税の10%が課税されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円〜330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330円〜695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円〜900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円〜1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円〜4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円〜 | 45% | 4,796,000円 |
一方で法人化すると税率は約30%になります。
これら2つの税率を比較し、所得税と住民税の税率が法人税の税率を上回った時点で法人化すると節税効果を得られます。
一般的な目安として副業の事業所得(売上から経費と控除を引いたもの)が500万円を超えると、こうした節税効果が得やすくなるといわれています。
あくまで目安である理由として、500万円を超えたとしても小規模共済や青色申告の活用など個人事業主としての節税ができていれば500万円以下に抑えられるというケースもあるためです。
個人事業主の節税についてはあらためて解説しますが、まずは事業所得が500万円を超えたら法人化について具体的な検討を始めた方が良いとご認識ください。
節税効果2:法人しか出来ない節税対策が出来る
個人事業では青色申告や、小規模企業共済等の対策しかできませんが、法人の場合は節税対策の幅が広がります。
例えば役員社宅(賃貸している自宅の賃料の5~8割を法人の経費化)や、退職金の活用(退職所得控除の活用・社会保険料の対象外)などがあります。
更にお得なのが、旅費規程というものです。
こちらは、規定を整えておく必要がありますが、出張に応じて、手当を出すことが出来ます。この手当に関しては、所得税、住民税、社会保険料の対象外となるためまるまる手取りとして得る事ができます。
節税効果3:給与所得控除が適用される
個人事業主であれば収入は事業所得ですが、法人化することで役員報酬(給与所得)になります。
これにより二つの節税効果が生まれます。
一つ目は給与所得控除が適用され課税額が下がること。
二つ目は給与所得を経費として処理できることです。また家族を役員にして給与を支払うことで世帯収入の手取りを増やす事が出来ます。
節税効果4:赤字の繰越期間が10年に
個人事業主の3年に対して法人では10年と期間が長いです(いずれも青色申告の場合)。
事業が赤字の場合翌年度以降に繰り越すことが可能ですが、繰り越せる期間が長ければ長いほどより黒字になった年と相殺できるので節税効果を得られます。
2.社会的な信用度が上がる
法人になると謄本にさまざまな情報が記載される組織になることから個人事業主よりも社会的な信用度が高くなります。
そのため契約や融資、人材採用などの点において有利になる場合があります。
企業によっては個人事業主との取引を行わないこともあるため、展開する事業の幅も広がると言えるでしょう。
3.融資を受けやすくなる
法人化することで金融機関からの融資が受けやすくなったり、融資の限度額が引き上げられる場合があります。
こうしたことで事業拡大のための投資もしやすくなると言えます。
法人化するデメリット
法人化にはメリットがある半面、デメリットもあります。
法人化すれば何もかも良いことだらけ、というわけにはいかないので法人化の判断をするため主なデメリットも解説します。
1.事務負担が増える
法人になると必要な作成書類が増え処理も煩雑になるため、決算・申告等を行うにあたり顧問税理士に依頼する必要性が高まります。
すでに確定申告などで税理士に依頼している場合は支払額が増える可能性がありますので相談するようにしましょう。
2.設立に費用が必要
個人事業主が事業を行う場合は税務署に開業届を提出するのみでよいのですが、法人の場合は法務局への登記申請が必要です。
登記費用は合同会社は6万円〜、株式会社は18万円〜と会社の形態にもよりますが総額だと約10万~25万円ほどが必要となります。
印紙代
紙で定款を作成する場合は株式会社、合同会社ともに40,000円の印紙(印紙税)が必要となります。
一方、電子(PDF)で定款を作成する場合、この費用はかかりません。
しかしマイナンバーカードを読み取る必要があるためICカードリーダーを用意する必要があります。
専門家に依頼する場合は概ねICカードリーダーを持っているため電子定款で対応可能です。
定款の認証手数料
株式会社を設立する場合は定款を公証人に認証してもらうため認証手数料がかかります。
定款の認証の手数料は、設立する会社の資本金等の額に応じ100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、それ以上は5万円となります。
合同会社は定款への認証が必要ないため認証手数料はかかりません。
謄本手数料
定款の認証を行っていただくのと同時に、登記時に必要な定款の謄本を作成してもらう必要があります。謄本手数料は1ページ250円で、登記申請用と保管用の合計2冊が必要になります。ページ数にもよりますが平均すると2,000円程度と言われています。
登録免許税
株式会社の場合は登録免許税として印紙代が15万円必要となります。ただし資本金の1,000分の7の金額が15万円を上回る場合はその金額が登録免許税として必要になります。
一方、合同会社の場合は登録免許税として印紙代が6万円が必要となります。
こちらも株式会社同様に資本金の1,000分の7の金額が6万円を上回る場合、その金額が必要となります。
株式会社 | 合同会社 | |
印紙代 | 電子:0円 紙:40,000円 | 電子:0円 紙:40,000円 |
定款の認証手数料 | 30,000円〜50,000円 | 0円 |
謄本手数料 | 約2,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円〜 | 60,000円〜 |
合計 | 182,000円〜 | 60,000円〜 |
最近では福岡市が福岡市新規創業促進補助金として登記費用を補助するなど起業促進の補助制度もあるので、それらは別であらためてご紹介いたします。
3.法人住民税「均等割」の負担
法人の場合たとえ赤字であっても法人住民税の均等割が毎年必要です。
これは会社が各自治体に支払う固定費のようなもので、金額は自治体や会社の規模によって異なりますが最低でも約7万円が必要です。
4.社会保険の加入
個人事業主の場合、従業員が5人未満であれば社会保険の加入義務は発生しませんが、法人の場合はたとえ社長1人であっても社会保険の加入が義務付けられています。
通常、社会保険料は個人負担と会社負担の労使折半になりますが、ご自身が社長の場合は、個人負担と会社負担の両方を負担する事になりますので社会保険料の負担が大きくなるのも注意が必要です。
法人化のタイミングは?
いかがでしたでしょうか?
あらためて法人化の検討は、節税効果が得られやすくなる副業の事業所得が500万円を超えるタイミングを一つの目安にするとよいでしょう。
ただし法人化にもデメリットがあるので、個人事業主としてでできる対策をまず行うことが先決です。
事業所得が500万円を超えそうなタイミングでまずは税理士に相談してみることをおすすめします。
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